連載コラム:動物愛護の現状


第2回『ワン・ウェルフェアとは何か』

 この何年かの間に人間の健康と福祉に関わる専門団体および動物関係者の間でワン・ヘルスという概念が国際的にも定着してきたようである。これは保健問題に関しては人間と動物を分けて考えることは難しく双方の健康が連動している状況にあるという事実を世界が認めたということであろう。言うまでもなく世界中で人獣共通感染症などが大きな課題となっている。また環境汚染などによって健康被害を受けるのは人も動物も一緒であり生活環境の整備、自然保護の推進等々は全ての生き物に恩恵をもたらすものである。

 しかし最近ではこのワン・ヘルスという考え方がさらに進化を遂げている。今世界の識者の間ではワン・ウェルフェアという言葉が交わされるようになってきた。健康だけではなく生活の質や心身のウェルビーイング(幸福感)は人にとっても動物にとっても大切なことでありそれ自体も連動しているという概念である。健康は一つと同時に福祉も一つであるということなのであろう。これはまさにその通りであろう。

 人間に対する異常な暴力的犯罪の陰にはしばしば動物虐待の痕跡がある。経済の浮き沈みによって生活環境が悪化すれば人も動物もそのあおりを受ける。さらにはファクトリ―ファーム(工場的農場)で生産される家畜の過酷な生活環境を補うために成長促進や健康維持の目的で用いられる抗生物質が耐性菌を生み出しそれが人間医療にも大きな影を落としている。家畜の生産現場において動物自体が優良な環境に置かれていればこのような問題は出現しない。ここでも家畜の福祉イコール人間の福祉ということであろう。

 日本においては福祉という言葉は人間のためのものであると言い張る人々がいる。しかしそれでは世界中で専門家たちが口にしているワン・ウェルフェアという言葉は日本ではどのように表現したらよいのであろう?それとも日本はお得意の文化論の陰に隠れとおすのであろうか?「日本語の福祉という言葉は英語のウェルフェアとは異なる」と言い張るのであろうか?

 我が国には世界に誇れる文化があることは確かである。しかしグローバル・コミュニティ、我ら皆地球市民、という考え方に乗り遅れてしまうような時代遅れの文化論はそろそろやめにするべきではなかろうか?先進国としての自負があるのであればワン・ウェルフェア、福祉は一つ、という考え方の真の意味を理解し受け入れることが必要である。


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